リンパ浮腫について
目次
リンパ浮腫とは
リンパ浮腫は、リンパ輸送システムの機能不全によって組織間隙に生理的な代償能力を越えて過剰な組織液が貯留した状態です。本邦では、悪性腫瘍の手術の際のリンパ節郭清後に発症する続発性リンパ浮腫が多く、乳癌手術後の10~30%、子宮癌手術後の12~40%に発症すると報告されており、上肢リンパ浮腫が3~5万人、下肢リンパ浮腫が5~7万人存在すると推定されていますが、正確な統計は不明です。「手足のむくみ」や、それに伴う蜂窩織炎(皮膚の感染症)が主な症状になります。
リンパ浮腫の分類
- 原発性(1次性)リンパ浮腫:リンパ管系の低形成、無形成などの異常が先天的に存在している。
- 続発性(2次性)リンパ浮腫:外的要因によりリンパ循環の障害が起こり発症する。
続発性リンパ浮腫の中では、悪性腫瘍の治療に伴うものが最多です。
他には、外傷、リウマチ、フィラリア感染などが続発性リンパ浮腫の原因とされています。
リンパ浮腫の診断
手足の末端に緑色の色素(インドシアニングリーン)を注射し、専用の近赤外カメラで観察することでリンパの流れを確認します。リンパ液が貯留している所見があると診断になります。また、この検査でどの部分に貯留があるかを確認して、次の治療計画を行います。
圧迫療法と外科治療
リンパ浮腫は慢性の疾患であり、浮腫をコントロールすることが大切です。根治は難しいことが多いですが、治療により進行を遅らせることができます。圧迫療法(保存治療)と外科治療を組み合わせることで、より高い治療効果が期待できます。
圧迫療法とは
圧迫療法は、弾性包帯や弾性ストッキング・スリーブ・グローブなどの弾性着衣によって腕や脚を圧迫する治療になります。むくみとは、細胞や組織間にある間質液が過剰になった状態であり、圧迫によって毛細血管から漏出する間質液を減らし、静脈還流を増やす効果が期待されます。一方で圧迫が強すぎると細胞に必要な酸素や栄養が不足してしまうため、適度な圧迫力を心がける必要があります。
未治療の場合は、まずこの圧迫療法から開始します。
手術療法とは
体表のリンパ液は、下肢であれば鼠径リンパ節、上肢であれば腋窩リンパ節が入口となり深部に流れ心臓の傍まで運ばれると静脈に合流し血液循環に取り込まれます。
癌治療に伴うリンパ郭清によりリンパの通り道が障害されることで、障害部位の下流域ではリンパ液が滞り、リンパ浮腫となります。
リンパ循環を改善させる手術には、リンパ管静脈吻合術(LVA)が主流です。
リンパ管静脈吻合術(LVA)
リンパ管静脈吻合術(LVA: Lymphaticovenous Anastomosis)は、顕微鏡下にリンパ管と静脈を吻合し、四肢の中でリンパ液を血液循環に戻すためのバイパスを造る方法です。
手術自体は4時間前後で、全身麻酔と局所麻酔は症例に応じて選択します。術後の安静・圧迫療法も込みでの治療を基本としており、1週間前後の入院になります。
蜂窩織炎
リンパ浮腫は「手足のむくみ」だけでなく、しばしば皮膚の感染症を引き起こします。影響を受けた部分が赤くなったり、熱を持ったりします。
小さな傷や免疫低下などによって細菌が侵入し、リンパ液の貯留の影響で、リンパ浮腫のある部分に留まってしまうことで起こると考えられています。
飲み薬の抗生物質で改善する場合もありますが、歩けないくらいであったり、全身状態にも影響がある場合は、抗生物質点滴、安静・クーリング目的に入院となる場合があります。
蜂窩織炎がしばしば起こることで患者さんの社会生活が影響を受けてしまうことがあります。LVAは、この蜂窩織炎の頻度を下げる、というのが最大の効果とされています。
他にも治療選択肢として、以下のようなものもあります。リンパ浮腫の程度や治療歴に応じて検討していきます。
リンパ移植術
リンパ浮腫の状態が継続すると、機能を持ったリンパ管の数は減り、リンパ管静脈吻合術を行う事ができなくなります。機能したリンパ管を失った重症リンパ浮腫がリンパ移植術の適応になります。リンパ移植術は、リンパ管とリンパ節を含めたリンパ組織を移植し新たなリンパ循環を再建する手術です。リンパ組織は、顎下部、鎖骨上部、外側胸部、鼠径部などから採取します。手術自体は全身麻酔で一日がかりのものになり、2週間前後の入院期間になることが多いです。
脂肪吸引術
リンパ浮腫の状態が進行すると、組織の線維化が進行し、病気の四肢が硬くなります。物理的に減量するという手術です。LVAと併用して行う場合もあります。
外来受診にあたって
リンパ浮腫は専門としている医師が全国を見ても多くはなく、診断がつくまでに複数の医療機関や診療科を受診される方も少なくありません。
当院は、リンパ浮腫の専門外来がございます。別の医療機関でリンパ浮腫の疑い、と言われ、当科での精査・加療のご希望がございましたら、紹介状をご持参の上で当院への受診予約をご検討ください。
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