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特に得意としている疾患

SPECIALITY

顔面神経麻痺

幼少期からの顔面神経麻痺に対する治療


東大病院形成外科の顔面神経麻痺専門外来を受診する小児の顔面神経麻痺患者さんで、比較的多い3つのタイプについてご説明します。

A. 顔面神経下顎縁枝麻痺(下口唇・口角下制筋麻痺)
B. 顔面神経麻痺(第1第2鰓弓症候群に伴うものと、それ以外のもの)
C. 両側顔面神経麻痺(メビウス症候群、両側第1第2鰓弓症候群ほか)


*第一第二鰓弓症候群とは?(日本形成外科学会のページに移動します)
**メビウス症候群とは?(難病情報センターのページに移動します)

A. 顔面神経下顎縁枝麻痺(下口唇・口角下制筋麻痺)


 片側の下口唇を下に引く力が弱い(または無い)状態で、片側下口唇の口唇下制筋や口角下制筋の低形成が原因です。平常時には、ほとんど普通の顔ですが、笑うと麻痺側の下口唇が下に引かれないため、下口唇の形状が“三角形状に”非対称になります。生後数か月の健診で異常が指摘され、慌てて受診されることが多いですが、構語や摂食の発達には支障はなく、整容性(見た目)だけの問題であることがほとんどです。手術による治療は傷あとが残るのが欠点なので、当科では、「手術をしてキズができてもいいから治したい」という本人の意思がしっかり出てくる中学生以降に手術を行っています。
 ただ、もし「幼稚園や小学校で、口の曲がりが理由で、いじめにあう」などの特別な理由があれば、修学時ころに手術を行う場合もありますので、ご相談ください。
この口角・下口唇下制筋の動きの制限は患者さんによってさまざまで、ある程度動く人もいれば、まったく動かない人もいます。
 実際の手術に関してですが、一般的には、以下の1)が行われることが多いようですが、当科では、主として2)を行っています(図5A-2)。

1) 大腿筋膜を移植して下口唇の変形が顕著に出ないようにする手術
2) 非麻痺側(反対側)の下口唇・口角下制筋を減量したり、それらの筋肉を支配する顔面神経を減数したりして、健側があまり下に引かれないようにして、顔を対称に近くする手術
下口唇・口角下制筋は、いわゆる“泣き顔”や“不満顔”を表現することが多い筋肉なので、両側ともに弱くなっても、ほとんど問題にはなりません。むしろ、笑顔のときにすっきり口角が上がるようになるので、好まれる場合もあるようです。健常側の動きを減らすことを心配する患者さんには、まずボツリヌス毒素(ボトックス®)(2か月間ほど筋肉の動きを止める薬剤)注射をやってみて、健側にも可逆的な下制筋麻痺をつくり、この状態を経験してもらってから行う場合もあります。大腿筋膜を使用しないので、大腿(太もも)に傷がつかないのも利点です。

 全く動きのない患者さんに対しては、
3) 1)や2)を併用しながら健側の動きを弱め、神経・血管柄付き遊離筋肉移植を追加して、筋肉自体の動きも作る手術を行う場合もあります。
 どの手術をするのが良いかについては、受診されたときに、筋電図検査や動きの評価を行い、本人やご家族と相談しながら決めることになります。

B. 通常の片側顔面神経麻痺

まったくの完全麻痺から一部の顔の動きが弱いタイプまで、重症度は様々です。第1第2鰓弓症候群に伴うものと、それ以外のものがあり、多少、治療法が異なりますが、基本的には同様です。

1) 第1第2鰓弓症候群に伴わないもの

 平常時の顔はほとんど普通であることが多いですが、様々な程度の顔面神経麻痺が認められます。治療としては、基本的に、成人の顔面神経麻痺と同様ですが、小児~40歳くらいまでは、皮膚がしっかりしていて緩みがないので、眉毛を挙げることができなくても、平常時に眉毛が下がっていて視野狭窄を来たすことは少ないため、傷あとを作ってまで眉毛部に関する手術を行うことはほとんどありません。重症な麻痺の場合でも、閉瞼はなんとか可能な場合が多いのも特徴です。
ただ、笑った時の口周囲の顔の左右差が顕著になることが多く、整容的に大きな問題となるため、成人の陳旧性顔面神経麻痺の治療と同様に、健側顔面神経に神経をつなぐ遊離広背筋移植を行って、笑顔の再建を行うのが治療の中心となります。

2) 第1第2鰓弓症候群に伴うもの行


 顔の動きの麻痺だけではなく、小耳症、副耳などの耳介変形や、麻痺側の顔が小さい所見を伴う場合があります。このような患者さんに対しては、神経血管柄付き遊離広背筋・脂肪組織移植術(顔が小さいことに対しては、背中の脂肪を同時に移植して顔を膨らませます)を行います(図5B-2)。この手術は複雑に見えますが、1回の手術で行うことができます。

 一方で、顔の骨に顕著な左右差があり、嚙み合わせにも問題が大きい場合は、まず骨の治療を行ってから、仕上げの治療として、上記の手術を行うこともあります。

C. 両側顔面神経麻痺(メビウス症候群、両側鰓弓症候群など)

 稀な疾患ですが、片側ではなく両側に顔面神経麻痺があり、顔はほぼ対象ですが、両側に麻痺があるために表情に乏しく、閉瞼が困難であったり、笑っても口角が動かなかったりします。メビウス症候群では眼球の外転神経麻痺(および、その他の脳神経の麻痺)を伴う場合もあります。よく診察してみると、両側ともに完全麻痺である場合は少なく、弱いながらも、ある程度の動きが見られることが多いのも特徴です。両側鰓弓症候群では、両側の耳介形成不全(小耳症など)などが合併することがありますが、やはり、両側とも完全麻痺である場合は少ないようです。
 両側顔面神経麻痺の患者さんでも、角膜が傷つくほどの閉瞼障害は少なく、やはり、笑ったときに表情が乏しい(口角が上がらない)ことがいちばん問題になることが多くなります。たとえ顔面神経完全麻痺ではなくても、片側性顔面神経麻痺のように健側の顔面神経を使って笑いを再建することが困難なことが多いため、三叉神経という別の神経で支配されている側頭筋を用いて動きを再建したり、神経・血管柄付き遊離筋肉移植を両側に行い、神経を顔面神経以外(三叉神経・舌下神経など)につないで顔の動きを再建したりします。大腿筋膜移植による静的再建を追加することもあります。
 両側顔面神経麻痺は、個人差が大きいため、治療の詳細については受診時に麻痺の程度と部位を確認しながら治療の相談を行うことになります。
 受診時に、詳細についてご質問ください。