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眼瞼下垂症

眼瞼下垂とは?原因やどのような症状があるのか、仕組みや分類について解説

目次

眼瞼下垂とはどのような状態なのか、どのような症状が出るのか

年齢とともに瞼が重くなってきた、瞼が下がってきた… 外来でよくお伺いするお話です。見えにくいのでどうも疲れてしまう、大好きな読書が億劫になった、指で瞼を押さえていないとテレビもよく見られない…というのはご本人にとって辛いものです。目を開けるときに眉毛を上げないと見え辛い、額のシワが深くなった、正面を見るときについ顎を上げてしまう、というのも眼瞼下垂の症状の一つです。中にはまぶたが下がってしまったことで、逆さまつげ(睫毛内反)になる方もいます。

形成外科では、瞼が下がって見えにくくなった方のQOL(Quality of Life:生活の質)を改善できるよう、眼瞼下垂の治療を行なっております。

眼瞼下垂症になるしくみ

眼瞼下垂には先天性眼瞼下垂、腱膜性眼瞼下垂(加齢性眼瞼下垂や老人性眼瞼下垂ともいいます)、外傷性眼瞼下垂など様々な分類があります。ここではその中でも代表的な腱膜性眼瞼下垂が起きる仕組みを解説します。

まぶたの解剖

  • 瞼板
    硬さのある組織で、瞼の形を支えます。左右が靭帯により眼窩の骨と付着しており、眼瞼挙筋とミュラー筋によって挙上されます。
  • ミュラー筋
    瞼板を上端から挙上する、交感神経支配の筋肉です。
  • 眼瞼挙筋・挙筋腱膜
    挙筋腱膜へ連続し瞼板を挙上する動眼神経支配の筋肉です。脳腫瘍等の頭蓋内の病変が原因で動眼神経の麻痺が生じることで眼瞼下垂をきたすこともあります。
  • 前頭筋
    顔面神経支配の筋肉で、眉を上げる働きがあります。眼瞼下垂が生じると、それを代償するように眉をあげる方がほとんどです。このため、額に横シワが生じます。
  • 眼輪筋
    顔面神経支配の筋肉で、目を閉じる働きがあります。顔面神経麻痺の患者様が、目は開けられるのに、閉じられないのはこのためです。

腱膜性眼瞼下垂症の仕組み


眼瞼挙筋が瞼の形を支える瞼板を持ち上げますが、眼瞼挙筋と瞼板の繋がりが緩んでしまったり、外れているためにおきます。加齢が主な原因ですが、ハードコンタクトレンズが原因となることもあります。手術の際は二重の線を切開して、眼瞼挙筋と瞼板の繋がりを修復します。皮膚の余りがある場合には同時に調整することもあります。眼科の手術(白内障、緑内障など)の後で起こることもあります。

眼瞼下垂症の分類

眼瞼下垂になる原因として、加齢で腱膜が緩んでしまう腱膜性眼瞼下垂以外にも様々なものがあります。

先天性眼瞼下垂症

生まれつき、眼瞼挙筋やミュラー筋の働きが小さい方がいらっしゃいます。お子様の場合、瞳に瞼がかかっていると弱視が進む可能性があるので、眼科における診療と連携しながら手術適応を決定します。眼瞼挙筋やミュラー筋の働きが残っている場合には、これを最大限生かす術式とし、それが難しい場合には筋膜で眉毛を動かす筋肉と瞼板をつなげます。このため、大腿(太もも)を数センチ切らせていただく必要があります。お子様の状態によって最適の治療法をご提示いたします。また、お子様の場合全身麻酔での治療になりますので、術中の調整は難しく、修正を後日行う可能性もあります。術後目が乾燥しないように、親御さんにケアをしていただくことも大切です。

外傷性眼瞼下垂症

上まぶたの外傷では、受傷後早期の出血やむくみに伴ってまぶたが腫れて開きづらくなりますが、腫れが引くと眼瞼下垂は改善していきます。一方で、まぶたを上げる眼瞼挙筋や挙筋腱膜、動眼神経などに損傷がある場合や、傷が治るときに瘢痕という硬い組織に置き換わってしまった場合には、眼瞼下垂が残存してしまいます。

まぶた以外に原因がある眼瞼下垂

脳梗塞や脳腫瘍、重傷筋無力症、ホルネル症候群、ミトコンドリア脳筋症などまぶた以外に原因があって眼瞼下垂をきたす場合があります。
重症筋無力症は自己免疫疾患で、夕方になると眼瞼下垂や複視(ものが二重に見える症状)が起きるのが特徴です。

ボトックス注射後

前頭筋(額)や目の周りのボトックス注射後に、本来効いて欲しくない眼瞼挙筋に効いてしまうと眼瞼下垂になります。治療はボトックスの効果が切れるのを待つことが基本になります。ボツリヌス注射の効果は2~3ヶ月後をピークに半年から1年程度で効果が切れてきます。その間、どうしても日常生活に支障がある場合には、仕事中や読書中に額から眉毛やまぶたを上げるようにテープを貼ることをおすすめします。上げすぎると瞬きができず、目に傷がついてしまうので本当に必要な時のみとしてください。気になることがあれば施術を受けた医療機関に相談されてください。

皮膚のたるみ

主に加齢により皮膚が余っている状態です。瞼自体は上がっているけれども、皮膚が被さることによって見えにくくなります。手術の際は二重の線を切開して余った皮膚を取る場合と、眉毛の下で余った皮膚を取る場合があります。二重の線で皮膚を切除する場合、傷は目立たないですが厚みのある瞼になりやすいです。眉の下で切除する場合は、瞼の厚さは自然ですが、眉の真下に傷が残ります。

眼瞼下垂症の診察や保険診療について

当科では、臨床写真や計測器を用いて、視野を客観的に評価しています。眼瞼下垂により視野が障害されている場合には、保険診療により治療することができます。

参考文献
形成外科診療ガイドライン 6頭頸部・顔面疾患
V.K. Battu, D.R. Meyer, J.L. Wobig Improvement in subjective visual function and quality of life outcome measures after blepharoptosis surgery Am J Ophthalmol, 121 (1996), pp. 677-686