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特に得意としている疾患

SPECILITY

乳房再建

乳房再建とは

乳がんの治療によって失われた乳房の形態を、元の形に近づける手術です。
女性にとって乳房とは大切なものです。乳がんの治療だけでなく乳房の形を再建することで「女性らしさ」を取り戻すことができます。当科では失った乳房を再建するために最善の医療を提供したいと考えております。

目次

乳房再建の時期について

乳がん手術と同時に再建を開始する方法(一次再建)

乳がんの切除と同時に再建を行う方法です。当科で最も多く行っている方法は、まず乳房全摘術と同時にエキスパンダー(組織拡張器)と呼ばれる風船のような人工物を入れます。乳腺全摘術の際の傷から、大胸筋の下にエキスパンダーを挿入します。創が落ち着いてきたら生理食塩水を注入しはじめます。2-4週間ごとに通院していただき、生理食塩水を注入していくと、エキスパンダーが拡張して胸の皮膚が引き伸ばされていきます。6ヶ月程度かけて徐々に膨らませた後に、エキスパンダーを自分の組織(腹部や背部など)またはシリコンインプラントと入れ替える手術をします。自分の組織を使うのかシリコンインプラントを使うのかは、ティッシューエキスパンダーをふくらませる期間にゆっくり考えていただいて結構です。
注意点として、エキスパンダーには金属部分があるため、挿入している期間中はMRI検査は受けられれません。

乳がんの切除後に再建を行う方法(二次再建)

乳がんの切除が終了してからでも、乳腺外科の診察で問題がなければ乳房再建は可能です。インプラントを用いた再建と自家組織を用いた再建があります。再建の方法は患者さんの状態によって様々ですが、当科では一次再建と同様にエキスパンダーを挿入した後にシリコンインプラントや自家組織に置き換える場合が多いです。

乳房再建の方法について

乳房のふくらみを再建する方法は大きく分けて、自家組織(自分の皮膚や脂肪)を使って再建する方法と、人工物(シリコンインプラント)を用いて再建する方法があります。

自家組織(自分の皮膚・脂肪)を用いる方法

患者さん自身の皮膚や皮下脂肪を胸に移動してふくらみを作る方法です。自分の組織を使い、血流もあるため、柔らかく温かみのある乳房を再建することができます。また、インプラントのような破損の心配がないことや、インプラントでは再現できない胸元や腋の下近くの厚み、下垂した乳房などより自然な形態を再建することができます。
一方で、体の他の部分から組織を移動するため手術時間や入院期間が長くなります。また組織を採取する部位に傷あとが残ります。具体的な方法として腹直筋穿通枝皮弁や広背筋皮弁を多く行っておりますが、移植する組織としてお尻、太ももの内側など取った後の傷が目立たない部位を用いることも可能です。どこを用いるかはご本人の体型や希望に合わせてご相談いたします。

腹直筋(穿通枝)皮弁

腹部の皮膚、脂肪、筋肉を血管を含めて移植する方法です。主にへそから下の部分の脂肪を採取して移植を行います。大きな組織が採取できますので、乳房の大きな方に向いています。当科では皮弁採取部の犠牲を軽減するために、腹直筋を全部採取するのではなく、概ね温存する腹直筋穿通枝皮弁法を主に用いています。組織は血流がないと生着しませんので,皮弁を栄養する深下腹壁動静脈という血管(1~2mm程度)を採取し、移植床の血管と吻合します。本法の欠点としては、下腹部に横方向の傷が残ることや、血管を顕微鏡下につなぐ手術のため、血管が詰まると移植した皮弁が壊死する危険性があることなどです。また今後妊娠を希望される方にはあまりお勧めしておりません。

広背筋皮弁

背中の皮膚、脂肪、筋肉を血管を含めて移植する方法です。乳房が中程度まで方や将来妊娠出産の予定がある方に適しています。下図のように広背筋を栄養する血管をつけて採取して脇の下を通して欠損部に移動します。血管をつなぐ必要がないため、腹直筋皮弁に比べると短時間で行うこができます。

シリコンインプラント(人工乳房)を用いる方法

人工物であるシリコンインプラントを挿入する方法です。長所としては、体の他の部分に傷がつかない点や、手術時間や入院期間が短く、通常の生活に早く復帰できるなどの点が挙げられます。
一方欠点としては以下の点が挙げられます。まず乳房インプラントは様々な種類がありますが既製品のため、各個人の欠損に完全に一致のものはありません。特に大きい乳房や下垂乳房は左右差が出やすいです。またインプラントは異物のため、体の防御反応でインプラントの周りにかたい膜(カプセル)ができることがあります。カプセルは徐々に縮む性質があるため、インプラントに位置がずれたり変形したりすることがあります。
また注意点として、術後は破損のチェックのため、術後10年間は年1回程度のエコーやMRIなどによる定期チェックが必要となります。

乳頭・乳輪再建について

乳房の膨らみだけでなく乳頭や乳輪も再建することができます。
乳頭を作る方法には再建した乳房の皮膚を一部切って組み立てる方法や反対側の乳頭の一部を移植する方法があります。希望があれば局所麻酔で行うことが可能です。
乳輪を作る方法には、皮膚移植により再建する方法や、シリコン製の人工乳輪乳頭を貼る方法などもあります。

終わりに

以上のように、乳房再建には様々な方法があります。どの方法が良いかは患者さんの状況や価値観、希望によって異なります。患者さんごとに最も適した方法を提供いたしますので、どうぞお気軽に担当医にご相談ください。